財務キャッシュフローのマネジメントに関する重要なもう一つの側面は、計画的な借金の返済と株主への配当です。営業キャッシュフローが潤沢な会社は、期限前返済で予定以上のスピードで借金を返済していたり、莫大なお金を株主へ配当している会社が少なくありません。

 逆に、会社が財務的な窮地に追い込まれたときは、金融機関に対しての債権放棄やDES(Debt Equity Swap)の要請、株主に対しての無償減資の要請など、さまざまな手法を使って会社存続を模索していくことになります(これらの内容については『新版 財務3表一体理解法 発展編』をご参照ください)。

 そして、キャッシュフロー・マネジメントとは、これら営業キャッシュフロー・投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローの3つのキャッシュフロー全体をマネジメントすることです。

 例えば、投資キャッシュフローは基本的には営業キャッシュフローの範囲内でまかなうのが理想的です。それは借金を増やさないという意味からです。

 逆に言えば、営業キャッシュフローのほぼ全額を投資キャッシュフローにつぎ込むといった姿勢もまた理想です。ちなみに、日本の優良企業では、営業キャッシュフローのほぼ全額を投資キャッシュフローにつぎ込んでいる会社が少なくありません。日本の優良企業は伝統的に、短期利益の追求より長期的な視点で経営をしています。長期的な企業の繁栄には適切な投資を継続していくことが極めて重要なのです。

次のページ
原価計算の全体像