また、投資には設備投資のような直接事業に必要となる投資だけでなく、株式や国債などの有価証券への投資もあります。これら有価証券への投資も、全社的なキャッシュフローの中で何が有効なのかという観点から決めていかなければなりません。

 逆に、不要な資産を適切なタイミングで売却してキャッシュにしておくということも大切な投資キャッシュフローのマネジメントです。そうすれば、別の大切な投資に使うこともできますし、借金の返済に充てることもできます。

 財務キャッシュフローのマネジメントとは、必要な資金を適切なタイミングで調達してくることです。企業がお金を集めてくる方法は3つしかありません。自社で稼ぎ出す・他人から借りてくる・投資家から資本金として注入してもらうという3つです。自社で稼ぎ出すのが営業キャッシュフローであり、他人から借りてくる方法と投資家から資本金として注入してもらう方法が財務キャッシュフローに含まれます。

 財務的な資金調達の方法としては、借入金・社債・新株予約権付社債・コマーシャルペーパー・新株発行などさまざまなものがあります。本書は財務の専門家向けの本ではありませんので、これら資金調達の方法の詳細にまでは入り込みませんが、財務部門の人たちはこれら資金調達の方法について専門的な知識を持ち、日頃から金融機関や証券会社の人たちと良好な関係を構築しているはずです。

「企業のファイナンス力」という言い方をするときがあります。それは財務部門の人たちの専門的な知識や金融機関などとの良好な関係を指す場合もあります。ただ、真のファイナンス力とは、結局はその企業にお金を貸したり投資したりしたいと思わせる企業であるかどうかということです。そのための第1の条件は、利益をあげ続けられ、営業キャッシュフローを生み出し続けられる会社かどうかということなのです。

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「部門別原価計算」とは