キューバ危機当時のケネディ大統領(UPI/アフロ)

 一見して優柔不断な態度こそ、思わぬ記憶どうしが結びつく創造性につながる可能性が高い。千葉大学脳神経外科学元教授の岩立康男氏は、著書『直観脳 脳科学がつきとめた「ひらめき」「判断力」の強化法』(朝日新書)のなかでそう述べている。「積極果断」よりも「優柔不断」が上手くいく理由とは?『直観脳』から一部を抜粋して解説する。

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 直観というものは長年の経験知による記憶のネットワークをつなげることによって得られるため、その発現に時間がかかると考えた方が良い。つまり、何か決めようとしても、直観が降りてくるのを待つとなかなか物事を決められないということになってしまう。果たしてそれでいいのだろうか?

「優柔不断」という言葉をネットで調べてみると、〝優柔不断とは、物事の判断がなかなかできず、迷ってばかりいることを意味する四字熟語である。「煮え切らない」「不決断」「ためらい」とも言い換えることができる。また、対義語として、決断力があることを意味する「積極果断」がある〞と出てくる。

 この記述だけを見れば、優柔不断にはいいことは何もなく、昔で言えば「だらしない男」の代名詞のようにも聞こえてしまう。しかし、本当に「積極果断」がいいのだろうか?「優柔不断」は良くないのであろうか?

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岩立康男

岩立康男

岩立康男(いわだて・やすお) 1957年東京都生まれ。千葉大学脳神経外科学元教授、現在は東千葉メディカルセンター・センター長。千葉大学医学部卒業後、脳神経外科の臨床と研究を行う。脳腫瘍の治療法や脳細胞ネットワークなどに関する論文多数。2017年には、脳腫瘍細胞の治療抵抗性獲得に関する論文で米国脳神経外科学会の腫瘍部門年間最高賞を受賞。主な著書に『忘れる脳力』(朝日新書)がある。

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