その検討資料は、製品毎、顧客企業毎、営業拠点毎に緻密さを極め、細かい数字がぎっしり詰まった厚みのあるものでした。膨大な数字を分解してその中から変化や違いを見つけ出すのは分析ですが、その変化や違いの原因を見極めていくには知覚も必要です。まさに、分析と知覚をフル動員して3カ月先を見通しているという感じでした。そして、その見通しの的中率は驚異的なものでした。
私たちは未来を予測することはできません。将来どんなことが起こるかはわかりません。しかし、すでに起こっていることを先取りして手を打つことはできます。このことが、管理会計においては極めて重要なのです。
ドラッカーが極めて重大な意味を持つと言った2番目の「未来は今日とは違うものであり、かつ予測のできないものであるがゆえに、逆に予測せざることや予期せざることを起こさせることが可能である」ということについても少し触れておきます。
「予測せざることや予期せざることを起こさせる」ということを、ドラッカーの言葉を使ってビジネスの世界で具体的に言えば「未来において何かを起こすということは、新しい経済、新しい技術、新しい社会についての構想を事業の中で実現する」ということになります。
私たち人間は、予測せざることや予期せざることを起こすことができます。そして、ある構想を事業の中で実現させようとするときも、管理会計が役に立ちます。
事業が会計によって数値化されることのメリットは、実際に事業を行う前に、数字でのシミュレーションができることです。
管理会計は未来のための会計です。未来に向かって手を打たないのであれば、会計の数字を整理しても意味はないのです。