私の顧問先に電子機器の販売会社(以降、A社と呼ぶことにします)がありました。このA社の例でいえば、ある営業担当者が開発した効果的な販売方法は、その人が所属する営業拠点だけでなく他の営業拠点でも活用できるかもしれません。もしそうであれば、その販売方法を他の営業拠点の営業担当者にも横展開して、全社的に売上と利益を増やすことができるはずです。

 また、ある顧客企業での製品の販売方針がある時点から変わったのはなぜなのか。その原因次第では、同じようなことが別の顧客企業でも起こるかもしれません。それが市場や顧客の大きな変化によるものであるなら、他の顧客企業でも同じようなことが起こるとして、生産数量や在庫数量を事前に適切にコントロールしていかなければなりません。

 A社が一番時間をかけて慎重に検討していたのが、生産数量・販売数量・在庫数量の見通しでした。この会社の製品は製造までに3カ月のリードタイムが必要でした。つまり、製品ができあがる3カ月前に生産指示を出さなければなりませんでした。A社では3カ月先の販売数量を正確に見通さなければならなかったのです。その見通しが狂えば、欠品が出て販売機会を失うか、はたまた在庫が積み上がって経営を圧迫することになります。

 もちろん、未来を予測することはできません。しかし、前述したように、すでに起こっていることを先取りして手を打つことはできます。管理会計は基本的に内部をコントロールするものですが、当然ながら企業の外部の情報も極めて重要になります。A社では「どこから入手してきたのだろうか」と思うような、競業企業や顧客企業の幅広くかつディープな情報を入手し、それに加えて個々の営業担当者の現場の声を拾い上げ、3カ月先の販売数量を見通していました。

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