愛子さまが皇居・半蔵門を出発したのは午前8時半ごろ。周辺には、卒業式に出発する愛子さまにお祝いの声をかけようと、人びとが集まっていた。
「おめでとうございます」「愛子さま」と声があがると、ステーションワゴンの窓を少し開けて、柔らかな笑顔とともにペコリと会釈で応えた。
「愛子さまのお召し物ははっきり見えなかったのですが、スーツとはすこし違う印象でした。ニュースで振袖に袴姿の愛子さまを目にして、あまりに可愛らしくお似合いで、感激しました」
と、沿道にいた女性は話す。
十六葉八重表菊の「菊紋」が本振袖に
昭和の時代から皇室に着物をつくり、納めてきた「染の聚楽」代表の高橋泰三さんは、愛子さまがお正月にお召しになった御地赤(おじあか)の着物も手掛けた。
この日、愛子さまが和装で卒業式に臨んだというニュースを知り、
「愛子さまの色白のお顔に、桃花色の本振袖が美しく映えていらっしゃる。頬にほんのり赤味が差してお似合いの色です」
と、目を細めた。
愛子さまは、友禅染の本振袖に紺袴をお召しだった。
未婚の女性の第一礼装である本振り袖に三つ紋を入れた、格式の高い着物姿。
よく見ると、愛子さまの袖に菊紋が見える。天皇や皇后と、そのお子さま方など天皇ご一家にあたる内廷皇族は、十六葉八重表菊の菊紋を用いており、愛子さまの本振袖にあるのもこの菊紋だ。
「愛子さまによくお似合いの薄紅色の倫子(りんず)生地には、さや形の地紋が見えます。さや型は、卍(まんじ)つなぎを菱状にくずした意匠で、光の差し加減や角度によって陰影を楽しむことができます。格調高い文様である橘と笹が白く染め抜かれて全体にあしらわれています」(泰三さん)