写真はイメージ(GettyImages)

 よくみられる麻しんの合併症として、中耳炎や下痢が挙げられます。CDCによると、耳の感染症は、麻しんにかかった子供の約10人に1人に発生しており、下痢が報告されるのは、麻しん患者の10人に1人未満だといいます。

 麻しんの重篤な合併症としては、肺炎や脳炎が挙げられます。CDCによると、麻しんにかかった子どもの 20 人に 1 人が肺炎を合併しており、これは幼い子どもの麻しんによる死亡の最も一般的な原因となっています。また、麻しんにかかった子どもの 1,000 人に約 1 人が脳炎を発症し、その結果として、けいれんを起こしたり、耳が聞こえなくなったり、知的障害が残っているといいます。

 忘れてはいけないのは、妊婦さんの麻しん罹患です。麻しんワクチンを接種していない妊婦が麻しんに罹患すると、早産や低出生体重児の出産を引き起こす 可能性があるのです。

予防する上で重要なのはワクチン

 そんな麻しんを予防する上で重要なのが、ワクチン接種です。日本では、MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)が接種可能となっていますが、世界的にはMMRワクチン(麻しん・風しん・ムンプス混合ワクチン)が広く流通しています。CDCによると、MMR ワクチンの 1回接種で約93%の効果があり、2 回接種では 麻しんの予防に約 97% 有効であるといいます。

 現在、日本でも、より確実に免疫をつけるため、第 1 期として生後 12〜24 カ月未満の乳児に、第 2 期として 5 歳以上 7歳未満で小学校就学前 1 年間の小児に、それぞれ 1 回ずつ、MR ワクチンの接種が定期接種として実施されています。日本は、こうした麻しんワクチン接種の導入と普及により、2015年には世界保健機関(WHO)から、麻しん「排除状態」と認定されるまでに至っています。

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ワクチン接種率からこのままでは流行も