国交なき国への渡航に先立ち、日本と北朝鮮の両国政府によっての取り決めは厳守された。隠して持ち込んだユニホームや日の丸を北朝鮮の空港で没収されたサポーターも何人かいたというが……。
「太鼓などの応援用具が使えなかったこと以外は普段のアウェー戦と変わらなかった。日本サポーターは一カ所に隔離されたがモノが飛んでくるようなこともなかった。カザフスタンなどで試合中に石を投げられた時の方がよほど身の危険を感じた」(北朝鮮へ渡航したサポーター)
ぎっしり埋まった5万人収容のスタンドでは北朝鮮国旗が振られ、メガホンや太鼓の音が響いた。「日本サポーターが立ち上がると即座に座るように注意はされたが、その他には何も問題はなかった」と現地で観戦したサポーターが語るように、大きな混乱はなく試合は行われた。
「マスコミ関係でも大きなトラブルはなく通常業務ができた。一方的な取材規制などもなく、他国でのアウェー戦と同様にルールを守っていれば何の問題もなかった」(フリーのスポーツカメラマン)
のちに日本サッカー協会は「通常はないことが相次いだ」と、北朝鮮サッカー協会、国際サッカー連盟、アジア・サッカー連盟に意見書を送ったが、その内容は「平壌国際空港での徹底検査」や「パフォーマンスに影響する食料」が通達なしに没収されたことなどについて。現場を取材をした人や観戦したファンにとっては特段大きな問題はなかったという。
「スタンドから締め出されたりモノを投げられたりしたなら話は別だが、試合終了まで安全に取材や応援ができた。サポーターも経験を積んでいるので、今後はそういう心配や不安も出てこないのではないか」(フリーのスポーツカメラマン)
「アウェーでの国際試合は誰もが大きな経験を得られる場所。日本が世界一を目指すのなら選手のみでなく、関係者やサポーターも修羅場を経験してもいい。そういう意味では、北朝鮮での試合は日本サッカー界にとって大事な一戦と言える」(サッカー関連ジャーナリスト)
北朝鮮・平壌での開催がギリギリのタイミングになり、今回も前回と同じく日本政府はサポーターに渡航の自粛を求めている。しかしどのような形になろうと北朝鮮でもサッカーが安全に行われることは間違いない。政治的には多くの問題を抱える両国ではあるが、サッカーを通じて国際交流ができるのは素晴らしいこと。不測の事態ばかり想定するのではなくピッチ上でのナイスゲームを期待したいと思う。