放送作家の鈴木おさむさん

 鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、「希望」を伝える大切さについて。

【写真】槇原敬之さんとのツーショット

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 このエッセイも僕が放送作家を辞めるまでなのであと3回!

 毎週金曜日のお昼に放送されている自分がパーソナリティーをやっている東京FMの「JUMP UP MELODEIS」では、今月は放送作家として色々お世話になった人に来て頂いています。

 前回は槇原敬之さんに来て頂きました。僕が19歳でこの業界に入り、一番に見習いとして付かせて貰った番組が「槇原敬之のオールナイトニッポン」でした。

 僕が入ったのは2月で、5月に「もう恋なんてしない」という曲が発売になり、ミリオンを超える大ヒット。この業界に入り、最初にかなりのビッグになっていった人。そこから槇原さんとはポイントでお仕事をさせていただいています。

 そんな槇原さんは、曲を作るときに「詞先」で作るそうです。ミュージシャンの方は「曲先」と言って、先に曲を作り、あとで詞をハメていく人が多い。槇原さんは珍しく、詞を先に書いて後から曲を乗せる。

 槇原さんは沢山の曲がありますが、時折、ドロっとした歌詞の曲があります。自分の嫌いな部分がドロっと出ていたり、人に言えない欲をさらけ出していたり、誰かに対しての許せない思いが爆発しているかのような。そんな歌がある。

 僕はそんな槇原さんの曲が大好きです。ラジオで槇原さんに「怒りをきっかけに歌を作ることはありますか?」と聞いたら、「ある」と。その怒りは世の中に対してだったり、誰かに向けられたりしたものかもしれない。

 だけど、必ず最後は「希望で終わりたい」と言っていた。確かにそうなんですよね。歌の中でどんなに怒りや許せない思いが爆発していても、最後まで聞くとそこには「希望」が見えて、優しさがあるんです。

 槇原さんはあるときプロデユーサーに言われたらしい。「最後には希望を見せてほしい」と。

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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まさかの、希望のない曲だった