たとえば、今回の騒動の発端となった山内の発言は、実際に動画で確認してみると上から目線のクレームではなく、徹頭徹尾「被害者」の目線からの話であることがわかる。熱があってつらいから早く帰りたいのに、病院で聞かれたのと同じことを聞かれるのはしんどいから勘弁してほしい、という趣旨のことを言っている。

 そこには薬剤師の業務に対する無知や誤解が含まれているとはいえ、これ自体は体調不良を抱えて苦しみながら薬局を訪れた一患者の意見として、十分傾聴に値するものだろう。ここで話が終わっていれば、それほど問題になることはなかったはずだ。

 この後、馬場園と濱家が山内の認識不足を訂正するどころか、さらに誤解を広げるような発言を重ねていったことで、問題が生じてしまった。

 こういうとき、本来なら主にMCの立場の人間がフォローに回るべきである。出演者の誰かが明らかに行き過ぎた発言をしている場合、それを厳しくたしなめたり、説明を一言添えたりすることによって、印象を和らげることができる。

ツッコミ担当の役割

 そもそもいわゆる「ボケ」とか「笑える話」というのは、ある程度の言い過ぎややり過ぎによって成立しているところがある。それに対してツッコミ担当の芸人が修正を加えたり間違いを指摘したりすることで、見る側に安心感を与えたり、情報不足を補ったりすることができる。

 もちろん、フォローをすれば何でも許されるというものではないが、その一言があるかどうかだけでも、視聴者が感じる印象はだいぶ違ったものになる。

 今回の場合であれば、出演者がフォローを入れられなかったのなら、番組側が適切なフォローを入れるという手もある。ナレーションやテロップで正しい情報を伝えてさえいれば、やはり問題になることはなかっただろう。

 その意味で、今回の件の道義的な責任はテレビ局にある。出演者は番組を少しでも面白くするために、バランスを取りながらもある程度は踏み込んだ発言もするものだ。その素材の中からどこを使うか、どのように編集するかは全面的に番組側に委ねられている。

 ただ、個人的には犯人探しをしたいわけではない。このくだりに限らず、番組の内容そのものは面白かったので、今後も続いていってほしいと願うばかりだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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