裏金問題は、岸田文雄首相の政治倫理審査会出席にまで進展した。だが、核心は明らかにならなかった。確定申告の時期に重なり、納税者の怒りを買っている。AERA 2024年3月11日号より。
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国会議事堂の3階で2月29日に開かれた衆院政治倫理審査会。現役の首相として初めて出席した岸田文雄氏は終始、緊張した面持ちだった。派閥の裏金問題をめぐって「自民党は抜本的な出直しをしなければならない」と表明したが、裏金問題の経緯や使途について具体的な言及はなかった。立憲民主党の野田佳彦元首相は、岸田氏自身が資金集めパーティーをたびたび開催していることを批判。岸田氏は「首相在任中のパーティーは行わない」と約束する答弁に追い込まれた。
自民党派閥のパーティーにからむ裏金問題はついに、岸田首相自身の政倫審出席にまで進展した。しかし、政倫審での説明では、安倍派、二階派の幹部も含め派閥から議員へのキックバックが続いてきた経緯や、受け取った裏金を何に使ったかといった疑惑の核心は明らかにならないままだ。岸田政権を取り巻く暗雲が晴れる様子はない。2年半前に「聞く力」をアピールして登場した岸田氏は、持ち味を発揮することがないまま舞台を降りるのだろうか。
最低水準の支持率
自民党の安倍派を中心とした裏金問題で、この党の体質がさらけ出された。安倍派の国会議員3人、安倍派、二階派、岸田派の会計責任者らが立件された。
多額のパーティー券を企業に買わせ、キックバックをうけた裏金は選挙基盤の強化に充てた。建設や農業といった支持業界が細る中で、地方議員対策などに裏金が使われた可能性が大きい。領収書のないケースが多く、本来なら「脱税」に問われる。確定申告の時期に重なり、納税者の怒りを買っている。2月中旬に各メディアが行った世論調査では岸田内閣の支持率は最低水準(朝日新聞21%、毎日新聞14%、読売新聞24%)だ。