AERA 2024年3月11日号より

 支持率低下は昨年秋から続いている。防衛費増額の財源として所得税・法人税などの増税を予定し、岸田首相が「増税メガネ」と揶揄された。それに対して所得税・住民税の減税を打ち出したが、「ごまかし」という批判が高まり、支持率が急落。岸田氏に対する信頼が失われた結果が支持率低下だった。そこに裏金疑惑の直撃を受け、岸田政権は存亡の危機に追い込まれた。

 苦境打開のために岸田首相が打ち出したのが「派閥解散」だった。裏金の温床は自民党の派閥体質だとして、自らが率いてきた岸田派の解散を明言。これを受けて、ほとんどの所属議員が裏金を受け取っていた安倍派も解散を決め、二階俊博会長(元幹事長)が直近5年間で3526万円の裏金を受け取っていた二階派も解散することになった。ただ、麻生派、茂木派は事実上、存続し、派閥解散は中途半端なものとなった。自民党は岸田首相の指示を受けて、所属国会議員へのアンケート調査と裏金を受け取ったとされる議員に対する聴き取り調査を実施。だが、裏金が続いてきた経緯と使途は明らかになっていない。

指導力不足を露呈

 野党側は自民党の調査では不十分だとして、衆参両院の政倫審で関係議員が説明するよう要求。衆院では、裏金を受け取った51人の全衆院議員の出席を求めたが、自民党は安倍派座長の塩谷立元文部科学相と事務総長経験者の西村康稔前経済産業相、松野博一前官房長官、高木毅前国会対策委員長、二階派事務総長の武田良太元総務相の5人が説明することになった。しかし、5人は政倫審の規定に従って非公開とすることを要請。公開を主張する野党側との交渉が難航した。業を煮やした岸田首相が、自ら全面公開の政倫審に出席することで5人の公開審議も決まったが、その過程では岸田首相の指導力不足を露呈することとなった。

 衆院の政倫審で、首相を含め出席者はすでに公表されている不記載の金額などを説明するだけで、キックバックの経緯や使途については明確な回答を避けた。野党側は「疑惑は解消されていない」として、今後、衆院予算委員会などで二階元幹事長や萩生田光一前政務調査会長らの参考人招致や証人喚問を要求する構えだ。(政治ジャーナリスト・星浩)

AERA 2024年3月11日号より抜粋

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