ゲラに添えられたイラスト
ゲラに添えられたイラスト

 初めに提案されていた構成案は、どちらかというと重い話が多めで。私としては暗い部分を全面に押し出すのは違うかなあと、少し違和感があったんですよね。ふざけている私も、本当の私なので。

 なので、収録エピソードのバランスをどうするか、読んだ方にどう伝わるのか、というところで少し時間をかけてお話しすることはありました。

――初めての作業で、大変なこともあったのでは?

 元々ウェブで公開していたものは横書きで、改行も多かったので、最初は縦書きに違和感があって苦戦しました。

 でも、Wordでの原稿修正の作業を終えゲラにする段階で、デザイナーの脇田あすかさんからのご提案で本文のフォントをゴシック体にしてもらったんです。ゴシック体になったことで、私の文章のもっている雰囲気とのズレというか、ミスマッチ感がなくなって、作業もはかどりました。

 あとは、作業中にこのゆるめのフォントと私のくだらない話に、綺麗な字で校正者さんが指摘を入れてくださるのが、ちょっとシュールで面白かったな。私の手元へゲラが届いた時には、校正者さんと編集者の指摘が入った状態だったので。

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 校正者さんは日本語のスペシャリストなので、まっとうなことしかおっしゃらないんです。私のどんなくだらない文章も、それはそれとして受け入れて、ただ「日本語的にはここ間違いですよ」「この表現はこういう時には使われませんよ」「このオノマトペは敢えてですか?」とか、まじめな指摘を入れてくださる。この温度感が面白すぎて、面白恥ずかしい。

 特に覚えているのは、私が人生初の家出をしたときのことを書いた「4歳の家出」という話の一部分。『走れメロス』を意識して「かの邪知暴虐の母から逃げねばならぬと決意した」と書いたんです。

 そこに、校正者さんから「邪知暴虐“な”の方が日本語的に良いのでは?」という指摘が入って、さらにそこへ、編集さんが「ママOK。メロスなので」と一言添えていたのは、思わず笑っちゃいました。「メロスなので」ってなかなか見る言葉じゃないから(笑)

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