<2>お金や制度の手続きをする
親ががんだとわかったら、早めに医療費助成制度の高額療養費制度を活用してください。自己負担限度額を超えて支払ったぶんは戻ってきます。事前に市区町村や会社などの各保険の窓口で「限度額適用認定証」を交付してもらい病院に提示すれば、外来でも入院でも限度額以上に支払う必要はありません。
「病院の付き添いはご近所さんや友だちにお願いできても、お金の管理や制度の申請は家族でないとむずかしいですよね。特にお金については早めに相談しておきましょう」(長谷川さん)
<3>治療後の生活を考える
手術はもちろん抗がん剤治療の影響で、今まで通りの生活がしにくくなることもあります。本人は治療で精一杯になりがちのため、家族など周囲の人が先を見越したサポート態勢を組む必要があるでしょう。
「退院後に元の生活に戻れるかどうか、事前に医師に確認しておきましょう。手術の影響で一人暮らしが難しくなることもあります。リハビリ病院に転院する、介護保険を申請するなど、退院後の準備は早めに進めましょう。介護保険を申請する場合には、市区町村の窓口や地域包括支援センターに問い合わせます。在宅医療に切り替える場合には、病院のがん相談支援センターや、退院支援の看護師に相談しましょう」(長谷川さん)
ちなみに現在は、手術の翌日から院内を歩くなどのリハビリが始まるのが普通です。自身もがん手術経験がある山口さんは「早期離床、早期リハビリは絶対に回復が早いです」と言います。
「でも、親世代は『術後は絶対安静』が常識でした。『こんなに痛いのに歩かせるなんてひどい看護師だ』と怒るかもしれません。子どもは『今はつらくても、絶対に効果があるらしいよ』とフォローするといいですね」
<4>ACP(人生会議)をする
親と「今後」について話すことも子どもの大事な役割です。「親世代は『亡くなる直前まで治療する』『病院の主治医の先生に看取ってもらう』と考えがちですが、残された時間を有意義に使うために副作用がある抗がん剤治療をやめ、緩和ケア中心の医療に移る選択もできます。自宅やホスピス、緩和ケア病棟など過ごす場所の選択肢はあるので、親の意向を確認したいものです」(長谷川さん)
「親に余命を伝えるのはむずかしいですよね。私の場合、母の余命が半年と医師に言われたとき、母にはまず『残念ながら治らないみたい』とだけ伝えました。少ししてから『来年、私の本が出るので、それまではがんばって』と余命を暗示し、別のタイミングで『今すぐのことじゃないけど、お葬式と遺骨について聞きたい』などと少しずつ確認しました。母はなんとなく察して、自分から医師に病状を聞いたようです。ACPは、親を理解してなんでも聞ける関係でないと難しいと実感します。それでも『死ぬまで、どう生きるか』をサポートするには欠かせない話し合いなのです」(山口さん)
(取材・文/神 素子)
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』より