そんなZさんの話も素直に受け入れ、礼拝に誘われて参加するようになった。宗教団体だとは気づいていたが、集会に行く前はその名前も知らなかった。
「聖書を学ぶ場に参加したのですが、びっくりするくらい内容が分かりやすかったんです。聖書って簡単に理解できるものではなく、(聖書を学ぶ場が)明らかにおかしかったと今でこそ分かります。でも、当時はその内容が自分の中に、すっと入ってきてしまったんです」
入信したあと、信者の集会で出会い、友達になったのが、1歳下の女性Aさんだ。宗教2世の彼女は人見知りだが、仲良くなると笑顔の絶えない優しい人だった。
同じ神様なのに何かがおかしい
平田さんの「味方」だった教団の人たちは、徐々に態度が変わる。教団以外の人との関係を断つようにと促され、平田さんは実際に友人との交流を控えた。だが、恋人と別れるようにと遠回しに言われた際に、初めて疑念が沸いた。
「キリスト教の人は、教団以外の人も『隣人』として大切にします。私が入信した宗教は、教団以外の人を『サタン』として明確に区別する。同じ神様なのに、何かがおかしいと感じました」
Aさんは、そんな平田さんの疑問を否定せず、「そういうこと、あるよね」と耳を傾け、自分の話をしてきたという。
幼いころからずっと自由がないこと。学校でも孤立していたこと。孤立していることを親に話しても、「教団以外の子どもはみんなサタンだから、試練として耐えるように」としか答えてくれなかったこと……。熱心な信者ではなかったAさんは、さらっと話した。
恋人と別れることを拒否した平田さん。すると、集会に参加させてもらえなくなるなど「クラス内のいじめ状態」にあった。そんな時に心配して声をかけてくれたのもAさんだった。
入信から11カ月ほどで脱会。もとの日常を取り戻しつつあったころ、衝撃的な話を耳にする。
Aさんが自死したのだ。
Zさんに事実を聞くと、遺書の存在を聞かされた。