宗教団体「エホバの証人」の元2世信者らで作る団体が公表した、教団内での児童に対する性的虐待についての調査結果。大人が未成年の男女に性行為の経験の有無を問いただすなど、一般社会では許されない行為である。だが、婚前交渉を禁じているエホバの証人では、性行為をした疑いのある未成年を幹部が詰問し、処分を下す「審理」が当然のように行なわれてきた。10代で被害を受け、母との関係が断絶した元2世信者の女性に思いを聞いた。
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「当時は自分が“罪”を犯したから仕方がないと思っていましたが、今考えれば、狂っていると思います」
そう率直な思いを語るのは、福岡県に住む元2世信者の佐竹由加里さん(仮名=40代)だ。夫と、幼い子どもと暮らしている。
両親が離婚し、エホバの証人の信者である母と暮らしていた佐竹さんは、中学生だった1996年に洗礼を受け、正式に信者になった。
「婚前交渉」は罪
エホバの証人はホームページに、「エホバの証人は大学など高等教育機関の環境が、モラルや神様との関係によくない影響を与えることがあると感じています」などと記しており、高等教育の道に進むことを奨励していない。
佐竹さんの母は仕事はせず、生活保護を受けていた。子育てよりも布教活動に多くの時間を割いていて、「半ばネグレクト(育児放棄)のような状況」(佐竹さん)だったという。だが、進学にはわりと寛容だったといい、中学卒業後は高等専門学校に進んだ。
「女子の生徒数がとても少ない環境だったこともあり、2年生の時に自然と交際相手ができました」と佐竹さんは振り返る。その恋人とは体の関係ももつようになった。普通の流れではある。
だが……。
エホバの証人は婚前交渉を禁じており、破ることは「罪」とみなされる。
運が悪いことに、恋人の中学時代の男性教師が、たまたまエホバの証人の信者だった。この教師は「長老」と呼ばれる地域の幹部の立場で、どこからか佐竹さんが交際しているとの噂が耳に入り、佐竹さんの母に告げた。