スズ子は有楽町(ラクチョー)で働く女性について、「生きるためにしてることを他人がとやかく言えない」と語っていた。それを「パンパンの味方」という見出しにしたのは、彼女らが本来女性に嫌われるはずの存在で、それをスズ子が「味方」と言えば反発する女性が増えるだろうと計算してのことだろう。つまりそれが、鮫島の「女の対立センサー」だ。茨田にしても、スズ子の映画進出について「あの子が決めたことだから」好きにしていいと言っていたのだ。そこからあることないことで茨田を挑発したのも、鮫島のセンサーゆえだ。
スズ子の味方ばかりに見える「ブギウギ」で、鮫島は初の悪役だ。ふてぶてしく感じの悪い人物だからこそ、スズ子とおミネ、スズ子と茨田の友情という結論にカタルシスが増す。
茨田は鮫島に乗せられたスズ子との対談で、「ブギの人気なんてすぐに終わるわ」と言ってしまう。だがスズ子が新曲に取り組んでいると知ると、再び訪ねてきた鮫島に「目障りよ」と言う。人気商売、持ちつ持たれつじゃないかと言い募る鮫島には「人気が欲しくて歌ってるんじゃない」と追い返す。カタルシス第一弾。
そしてスズ子の家を訪ね「このたびはごめんなさい」と頭を下げ、今の気持ちを素直に明かす。(ゴシップ記事が増え)色眼鏡で見られる、歌で勝負しなくてはと焦っていた、と。ワンオペ育児を目の当たりにし、「助けてくれる人はいないの?」とスズ子に聞きもする。スズ子は「1人でふんばりますわ」と答える。そこから冒頭に書いた「へば」になるのだが、それでは終わらない。次の場面で「こぢら、福来スズ子さんのお宅たべか?」と女性(木野花)が訪ねてくる。茨田が同郷の家政婦を紹介したのだ。いかにも仕事ができそうな様子に、茨田ネットワークってば最強!と心が弾む。カタルシス第二弾。