天皇陛下は23日、64歳の誕生日を迎えられた。皇后雅子さまとのご結婚生活も30年を過ぎ、人生の半分の歳月をご一緒に過ごしたことになる。思い出されるのが、ご結婚してまもなく訪れた琵琶湖畔のホテル。おふたりで眺めた景色を、お互いを大切に思い合う恋の和歌「相聞歌」として、和歌に詠みこんだのだ。
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琵琶湖のほとりにたたずむ、彦根プリンスホテル(現・ビワフロント彦根)。8階のスイート・ルームからは、青い湖と対岸の山稜が一望できる。
当時皇太子だった天皇陛下と雅子さまは、1993年6月のご成婚からまもなく地方公務で滋賀県を訪れ、このホテルに宿泊。おふたりの部屋から見える琵琶湖は、朝や夕には茜色に染まり、夜には月が湖面を照らした。
そして翌94年1月、初めてご夫婦で歌会始の儀に臨んだ。
歌会始に向けて、天皇陛下や皇族方は前年の12月上旬までに、ご相談役の歌人に和歌を提出する。このとき相談役を務めていたのは、国学院大学名誉教授の岡野弘彦さんだった。
岡野さんによると、初めての歌会始で雅子さまは10首ほどの原案を示した。そのなかに、岡野さんの目に止まった一首があった。
〈君と見る波しづかなる琵琶の湖(うみ)さやけき月は水面(みのも)おし照る〉
ホテルの部屋から望む、琵琶湖の風景を詠んだ和歌。
雅子さまが用いた「おし照る」という言葉に、岡野さんはご結婚の雅子さまとの「お妃教育」でのやり取りを思い出したという。
「英語と仏語の代わりに和歌を」
語学が堪能な雅子さまは、英語や仏語の時間の代わりに和歌の講義を長めにと希望し、岡野さんから10時間ほどの講義を受けた。
岡野さんの印象に残ったのは、雅子さまの言語感覚の鋭さだった。