札幌心臓血管クリニック 心臓血管外科部長 低侵襲心臓手術センター長 橋本 誠 医師 写真/馬場岳人(写真映像部)

 医師もひとりの人。なぜ医の道を選び、どう修練を積み、今何を目指しているのか。人それぞれ経験や思いは異なる。しかし、時間に限りがある診療の現場では、医師の人となりや胸の内を詳しく聞くことは難しい。そこで週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』では、最前線で活躍する注目の外科医6人をインタビューした。本記事では心臓病の手術の注目外科医、札幌心臓血管クリニック 心臓血管外科部長 低侵襲心臓手術センター長 橋本 誠 医師を紹介する。

【図表】札幌心臓血管クリニック・橋本誠医師の略歴はこちら

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 ダビンチなどを使ったロボット手術が、心臓の分野にも導入され始めている。橋本誠医師は札幌心臓血管クリニックの心臓血管外科部長として、このロボット手術をメインに、からだへの負担の少ない低侵襲心臓手術の責任者を任されている。

 同院は2022年の心臓手術の総数が472件で、全国10位。心臓バイパス手術や胸部大動脈瘤の手術を多く手がけるほか、ロボット手術(心臓弁膜症、ロボット補助下の冠動脈バイパス術の合計)は118件と全国トップレベル。心臓分野でロボット手術を導入している病院はまだ少ないため、手術を希望する患者が道内各地から紹介されてくる。

 「ロボット手術は術後の回復が本当に早い。高齢でも合併症が起こらず、3~5日で元気に退院していきます。その姿を見るたびに、やりがいを感じます」

 従来よりも小さい傷ですむ、胸骨を切らない心臓手術「MICS(ロボット手術を除く)」も、73件(同年)手がけている。

 高校卒業後の進学先は、大学の薬学部だった。

 「将来やりたい仕事が当時はまだ決まっていないこともあって、入学当初は不真面目な学生でした(笑)。それが薬の本格的な授業が始まると、おもしろくなってきて。からだの働きと、そこに効く薬理作用の絶妙なハーモナイズ(調和させること)に魅了されたのです」

薬学部で勉強にはまり、医師になることを決意

 なかでも血管の収縮や血流の調整で血圧や心臓に働きかける「循環作動薬」が好きだった。こうして勉強に専念しているうちに、「医師になって患者さんを直接、治したい」という思いが、湧き上がってきた。

 「人生で初めて感じた強烈なパッション(情熱)でした。医学部に入るために猛勉強しました」

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「1例で10例分の経験を積む」を基本姿勢に、技術の向上を模索