人間を食い散らかす「上弦の鬼」・童磨

「鬼」に共通する特性として忘れてはならないのは、「人間を食べる」ことである。われわれ人間が、他の生き物を食べずには生きられないように、特殊な条件がそろわないと、鬼は人間を食う。

 その上で、黒死牟・猗窩座・妓夫太郎は意地汚く人間を食べようとはしない。実際には食うのであろうが、本能にむやみやたらと流されはしないのだという誇りのようなものが垣間見える。一方で、堕姫と半天狗には、人間を捕食しようとするシーンが描かれ、玉壺には人間の死体を蹂躙する「鬼としての残酷さ」が見られる。

 では童磨はどうか。童磨にいたっては、人間の、しかも「女性」限定で、貪欲に食い散らかす場面が多く描写されている。鬼殺隊の蟲柱・胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ)との、最後の決戦の際には、童磨が少なくとも10人以上の少女を殺害し、ボリボリと醜い音をたてて食っている場面が描写されている。そして、童磨は、人間の女を食べることの必然性をこんなふうに語るのだ。

<俺言ったんだよ! 女は腹の中で 赤ん坊を育てられるぐらい栄養分を持ってるんだから 女を沢山食べた方が早く強くなれるって>(18巻 第157話「舞い戻る魂」)

 この童磨のセリフ以降、後のコミックスでも、妊娠中の妻を子もろとも鬼に食い殺されてしまった人物のエピソードや、子を守るために逃げ鬼に食われてしまった母親のエピソードなどがいくつも挿入される。胡蝶しのぶの言葉を借りれば、童磨は「女を食うことに異様な執着があり 意地汚らしい」。そう、汚らしい鬼、なのだ。

童磨にとって「特別」だった2人の女性

 童磨の「捕食」の手順は、まずあっさりと対象の女性を殺し、その後で体をひきちぎってバリバリと音をたてて食べる。頭蓋骨は自分の部屋に保管することもあれば、その一部を鬼・玉壺にもらった壺にいけて、飾ることもある。しかし、鬼殺隊の隊士である嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)の母・琴葉(ことは)には思い入れがあり、「寿命が尽きるまで手元に置いといて食べないつもりだった」という。

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