小泉今日子さん、上田ケンジさんによる黒猫同盟(撮影/写真映像部・高野楓菜)

杉並区長選を追った映画の主題歌を担当

――黒同盟はドキュメンタリー映画「〇月〇日、区長になる女。」の劇伴、主題歌「黒猫同盟のミュニシパリズム」も担当しています。

小泉「監督のペヤンヌマキさん(劇作家・演出家)と去年、舞台(『ピエタ』)を作っていたんです。そのときから“杉並区長選が面白いことになっていて、撮影している”という話を聞いていて。映画化が決まったときに“『ミュニシパリズム』(杉並区民が作った応援歌)を小泉さんに歌ってもらって、もっといろんな人に広めたい”と言われたんですよ。黒猫同盟のほうがマッチするなと思ったし、上田さんも賛同してくれて“できることはやるよ”と言ってくれたので劇伴も担当させてもらいました」

上田「音楽を作るために映画を何回も見たんですが、選挙のシーンになるとドキドキしちゃうんですよね。当選するのは知っているのに」

小泉「映画館でも拍手が起きたそうですね。公開の規模も広がっているので、ぜひ見てほしいです」

――“ミュニシパリズム”(地域に根付いた自治的な民主主義や合意形成を重視する考え方。地域主権)をテーマにした映画に関わることも意義がありますね。

小泉「そうですね。(社会や政治に対して)何か意見を発信するたびに“右だ左だ”と言われちゃうんですけど、私はまったくそんなつもりはなくて、ダメなものはダメだし、当たり前のことを言っているだけだと思ってるんですよ。さっきも言ったように、伝えたいことは何度でも、いろんな形で発信し続けることが大事。黒猫同盟もそうだけど、歌で伝えるのはすごくいいなと思います」

――それも小泉さんが歌う理由なんでしょうね。黒猫同盟の今後の活動については?

上田「続けていきたいですね。曲作りは日課なので、何かできたら小泉さんに連絡します(笑)」

小泉「自由にやっていけたらいいですね。今年の2月で58歳になったんですけど、60歳までは歌おうと思っていて。そこから先は白紙です(笑)」

(取材・文/森 朋之)

黒猫同盟/上田ケンジ小泉今日子による音楽ユニット。ユニット名は、二人が同時期に保護猫の黒猫を引き取り飼い始めたことに由来する。黒猫の目線を通して見つめた今の世の中を音楽で描くユニット。ちなみに上田の猫の名前はひじきちゃん、小泉の猫は小福田さん。猫の日でもある2月22日に2ndアルバム『ムーランルージュの黒猫』を発売。2023 年に行われた初の全国ツアー会場限定販売CD としてリリースされた「チーズの船」「私のおうちの絵描さん」のニューミックスバージョンや爆風スランプの「東の島にブタがいた Vol. 3」を猫に置きかえカバーした「東の島にネコがいた」など、黒猫の目線を通して見つめた今の世の中を音楽で描く全10 曲が収録されている。3月から全国ツアー「黒猫同盟TOUR 2024 めざせ!モンマルトル」も開催される。

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森朋之

森朋之

森朋之(もり・ともゆき)/音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動をはじめ、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、音楽ナタリー、リアルサウンド、オリコンなど。

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