「うつ病の初期症状は、『不眠が連日続く』『食欲がない、あるいは食事がおいしいと感じない』などです。そのほか、『動悸や涙が止まらない』『集中力が続かず、ぼーっとしてしまう』という症状も、心の病気の入り口にいるサインです」(川村医師)
日本産業精神保健学会副理事長で精神科医として職域メンタルヘルスの研究をおこなっている北里大学大学院産業精神保健学教授の田中克俊医師は、「とくに不眠には注意が必要」といいます。
「どんな人でも眠れない状態が続くと、記憶力や判断力が低下します。そのような状態で働き続けても、抱えている問題の解決がさらに難しくなるだけでなく、そのうち脳の疲労が進んで体や心の不調が現れるようになってしまいます。不眠の改善には、睡眠薬以外の方法もありますので、眠れなくて困った状態が続いたら、会社の健康管理室や専門医に相談するようにしましょう」
予防には周囲に助けを求めることもポイント
心の病気の予防には、仕事の悩みやストレスについて話を聞いてくれる相談者や支援者を持つことが有効です。サポートがある人ではメンタルの不調が起こりにくいことがわかっています。
職場の相談先として、一番近くにいるのは上司です。川村医師は、
「『忙しそうだから』と遠慮するべきではありません。『5分でいいから時間を作ってほしい』と声をかけてください。上司がパワハラの当事者であるなどの理由で相談できない場合は、その上の上司、あるいは他課の管理職など、話せる相手を見つけましょう」
とアドバイスをします。
職場の産業医も相談先になります。産業医とは医師免許とは別に、産業医の認定資格を持ち、事業場において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事がおこなえるよう、専門的立場から指導・助言をおこなう医師です。患者(労働者)に対して医療行為はしないため、診療や薬の処方は医療機関の医師がおこないます。
産業医は医療機関や心理カウンセラーを紹介したり、復職の際に主治医と連絡を取り合うなどして、労働者のサポートを担います。