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「眠れない」「気力が出ない」など、心の不調を感じつつ、「解雇されるのが不安」などの理由で、悩みを誰にも相談できない人はけっこういるのではないでしょうか。メンタルへルスの不調を感じた場合、職場ではどこに相談すればいいのか、休職が必要なケースやタイミングを知ってもらうため、週刊朝日ムック「手術数でわかる いい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「職場のメンタルヘルス」全3回の1回目です。

【グラフ】ストレスを感じる事柄(10項目)で多いのは? 1位は「仕事の量」

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「いつもと違う自分」を感じたら、精神科・心療内科の受診を

 大手メーカーの営業職として勤務する佐々木健さん(仮名・31歳)は、責任感が強く、顧客からの信用も厚い社員です。「彼に任せておけば大丈夫」と部内では高く評価されていました。ところがある日、顧客が注文した商品が納期に届かないというトラブルが発生します。佐々木さんだけの責任ではなかったのですが、顧客から叱責されてすっかり落ち込み、その日から、眠れなくなってしまいました。

 佐々木さんは食事ものどを通らず、家族からは「休みをとって、心療内科に行ったほうがいい」と心配されましたが、無理をして出社を続けました。体調が悪そうな様子を見た上司が、「産業医に相談してはどうか」と声をかけました。日に日に調子が悪くなるという実感があった佐々木さんは、これに応じます。しかし産業医との面談日の直前、朝、ベッドから起きることができなくなり、そのまま、休職となってしまったのです……。

 厚生労働省の「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)」では、過去1年間にメンタルへルス不調により連続1カ月以上休職した労働者がいた事業所の割合は10.6%で、前年(8.8%)に比べ増加。また、教職員の精神疾患による休職者数が過去最多(文部科学省「令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査」)となるなど、心の病気による休職者は増えています。

 仕事量が多いなど、職場の問題が原因となって起こる心の病気は、主にうつ病と適応障害です。公的機関や民間企業で30年以上にわたり、産業医業務に従事している京都大学名誉教授の川村孝医師は、

「心の病気は『自然によくなるかもしれないから、もう少し様子を見よう』と思っている間にどんどん悪くなります。2~3週間以内に朝、起きられなくなり、そのまま休職、というケースも珍しくありません。また、重くなればなるほど、回復に時間がかかります。『仕事はできているけれど、いつもの自分と何か違う不調がある』という段階で、精神科や心療内科を受診してほしい」と話します。

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心の病気の入り口にいるサインは?