患者の不安を軽減するため診断はできるだけ迅速に
その後、大垣市民病院や名古屋大学病院で多様な手術を経験し、後輩に指導する機会も増えたころ、がん研有明病院に招かれる。肝胆膵がんは、術前から術後まで徹底した管理が必要だ。
「手術だけではなく、手術前後の管理が術後の合併症を防ぐことにつながります。例えば術前は運動療法や栄養管理などにより、3~4週間かけて全身状態をよくします。各分野の専門科の力が欠かせません」
各診療科の垣根をなくすことにもこだわってきた。
「モットーの一つが、診断や治療方針の決定を迅速にすること。患者さんは、治療方針が不確かな状態というのが一番不安だと思うからです。画像診断部や内科などと連携がとれているほど、スピーディーに進められます」
若手医師に教わり、ロボット手術を修業中
近年は、腹腔鏡手術やロボット手術が普及している。これらの手術に関して髙橋医師は「まだ修業の身」と話す。
「肝胆膵がんは現状では開腹でしかできない手術も多いですが、今後は腹腔鏡手術・ロボット手術が主流になるでしょう。当科は3年前にロボットを導入し、まず若手常勤医に経験を積んでもらいました。最近私に順番が回ってきたので、後輩医師に教わりながら習得しています」
肝臓、胆道、膵臓、開腹手術、腹腔鏡手術・ロボット手術、研究……チームの医師(常勤=6人)それぞれの得意分野を生かし、総合的に全分野で高いレベルを保つことを目指す。
術後の患者の様子が気になったり、最後の砦(とりで)と頼ってきた患者に対して手術すべきか悩んだり、気が抜けない日々が続く。
「当科は若手が多く、活気があるチーム。気が抜けない日々の中、彼らに刺激を受け、生かされていると感じます」
(取材・文/中寺暁子)
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』より