AERA 2024年2月26日号より

「セルフレジが導入されたんです。セミセルフレジにもなかなか慣れずただでさえ自信がなくなっているのに、社会から取り残されていく悲しさを感じます」

 お年寄りも時間がたてば慣れるはず。そんな声もある。しかし、先述のコンサル会社の調査では、セルフレジに「若干抵抗がある」と答えた人は年代を問わず一定数存在し、年齢が上がるほど増えている。阿古さんは言う。

「常にその時点での初心者やITが苦手な人は存在します。ITの進化があまりに速く、想定外のところでつまずく人たちに対するシステム開発側や導入する企業側の想像力が、追いついていないのではないか。誰もが対応できる前提で『お年寄りが困ろうが、お構いなし』で進むセルフレジ導入を見ていると、そんなことも気になります」

 別の面から、セルフレジ導入に疑問を持つ人もいる。本県の司法書士、松山洋さん(74)は「客が自分でレジの作業をしながら、代金は有人レジと同じなのはおかしい」と指摘する。

「ガソリンスタンドでも、セルフで給油すれば1リットルあたり数円安くなりますよね。客が労働を提供するのであれば、価格に反映されるべき。でなければ客は店の労働力の一部にただ利用されていることになる」

「店側の態度が不遜」

 松山さんはセミセルフレジの支払い方、つまり「お金を機械に対して支払う」ことにはまったく異存がないのだと言う。

「請求金額が確定してしまえば、支払いは買い主側の義務になりますから支払う先が人間でも機械でも関係ありません。自らバーコードを読み取るという形で『自分で請求し、自分で支払総額を確定させる』というその行為が、不合理なんです。そんなことを客に求める店側の態度は不遜だと、私は思います」

 この声を、店で働く人はどうとらえるのか。大手100円ショップなどで約10年のレジ打ち経験があり、漫画『チェッカー鳥海さん、レジまでお願いします』の著書もある狸谷(たぬきや)さん(40代)は、昨年秋に勤務先の店舗でセルフレジが導入され、「ありがたかった」と言う。

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