「私が勤める店舗は従業員4人でまわしていましたが、有人だとレジに3人とられるんです。忙しすぎて品出しが追いつかず、倉庫に品物はあるのに棚がスカスカでお客さまにお叱りを受けることもありました」

 導入後は、そのアテンド担当が1人で、サブアテンドが1人。かなり余裕ができたという。

「お客さまの買いたいものが売り場にない、という状況がなくなりました。たしかにお客さまにレジ行為を負担していただいている形ですが、その分、お買い物の環境をきちんと整えられた。そことの『引き換え』になっているのかなと思います」

 とはいえ店員には、導入したからこその「苦労」もある。

「60代くらいの男性がセルフレジに曲がった硬貨をたくさん入れてシステムにエラーが出てしまい、回復作業に戸惑っていたら『もっと勉強しとけ!』と怒鳴られたこともあります」

 狸谷さんの店舗は大手スーパー内にあり、スーパー専用の電子マネーを使いたい客も少なくないため、それ専用の有人レジを一つだけ残してある。ある日、50代くらいの女性が「電子マネーで払いたい」というので有人レジに誘導すると、実は現金での支払いだったという。

「指摘すると、『セルフレジだとわかってたら来なかった!』とキレられました。どうやらセルフレジが嫌だったみたいで(笑)。うそをついてまで有人レジに並ぶ人、多いです。バーコードの読み取りがうまくいかず時間がかかり、イライラをぶつけてくるお客さんもよくいました」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年2月26日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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