日々報道される凶悪犯罪。不景気を背景に「高額報酬」という言葉が飛び交い、一般人でもネットを通じて犯行に手を染めやすくなっている。「体感治安」も悪化、性犯罪の認知件数も増えた。「治安のいい日本」はもう昔話なのか。AERA 2024年2月26日号より。
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今年は年明け早々、物騒な事件が続いた。JR山手線の車内で女が刃物を振り回しけが人が出た。保育士が勤務先の保育園で女児にわいせつな行為をし、その様子をスマートフォンで撮影した疑いがあるとして再逮捕された。昨年も選挙演説会場で岸田文雄首相らに爆発物が投げられた事件があり、一昨年には安倍晋三元首相が銃撃され殺害された事件もあった。
「日本は治安がいい」と言われてきたが、“今は昔”なのだろうか。防犯アドバイザーの京師(きょうし)美佳さんは言う。
「犯罪の件数は、20年近く減少し続けていました」
法務省の犯罪白書などによると、刑法犯の認知件数は2003年以降、減少の一途をたどってきた。それが変わったのは22年。刑法犯認知件数は60.1万件となり、戦後最少だった21年から約5.8%増加した。23年は前年を10万件も上回り、70.3万件にまで増えた。京師さんは言う。
「犯行の内容が暴力的になっていると考えます」
まずは、振り込め詐欺などの特殊詐欺。認知件数は近年増加傾向だったが、20年に一時、件数が落ち込んだ。
「啓発活動で手口が広まったり、コンビニの店員さんが止めてくれたりして、特殊詐欺は減りました。それでも被害額は400億円近くありました。稼ぎが少なくなったと考えた特殊詐欺グループは昨年、強盗にシフトしました」(京師さん)
そして、ずっと減少を続けていた強盗の認知件数も22年以降、増えた。
実際に、最近は衝撃的な強盗事件が多かった。昨年5月、東京・銀座の時計店で少年らが腕時計などを奪って逃走し、逮捕された。朝日新聞などの報道によると、少年は友人に「高額報酬の仕事だ」と誘われ、内容はわからないまま引き受けたという。