平安時代にも人の言葉を解する猫、続々
なお、この宇多天皇の寵臣として時めき、退位後失脚して大宰府で客死したのが菅原道真である。
彼の来孫に当たる菅原孝標女は『更級日記』のなかに、少女時代に遭遇した迷い猫について記している。「あてにをかしげなる」(高貴で可愛らしい)様子で、よくいる猫とは違い「私の言葉がわかっているかのよう」だったという。夫の死後書き始めたと言われる『更級日記』において、猫の記億は少女時代を懐かしむ一節であり、奇しくも道真が仕えた帝の黒猫にも通じる印象的な猫記録となっている。
(ライター・吉門 裕)
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