「いわゆる“ガリ勉”は馬鹿にされるような雰囲気があったという出身者もいました。授業だけでは到底東大に合格できないので、東大受験の専門塾である鉄緑会に通う人も多い。その是非についてはここでは置きますが、多くの生徒は筑駒での授業と塾や予備校での東大入試対策を、学びの方法として使い分けています。教員から『東大に行け』と言われることもなく、よっぽど悪くない限り、学校の成績に関してもとやかく言われないそうです」
「自由闊達」な校風でも知られており、その考えは授業にも表れている。教科書をほとんど使用しないというのだ。代わりに、各教員が作成した資料などを使った独自の授業が行われている。
「どういった授業をするかの裁量権は、教員が持っています。教科書通りの授業では、筑駒生はすぐ理解できてしまって、面白くないもなんともない。生徒が興味を持てるような授業を作るのに、先生方も苦労されているようです」(小林さん)
小林さんは、多くの筑駒出身者や元教員から、特色ある授業の数々を聞いてきた。日本史で、1年間、自由民権運動だけを学ぶ授業もあれば、外交官の青木周蔵の自伝のみを扱う授業もあったという。また、数学でも中学1年の1学期を丸々使って、三平方の定理の証明をひたすらしていたと語る卒業生もいた。
「授業が教員によって本当に多種多様で、中学、高校レベルをはるかに超えて大学院レベルの授業を行う教員もいました。もっともいまはそこまで極端な授業は少なくなったようですが、教員は生徒の高い知的好奇心を満たすために、授業ではさまざまな工夫を凝らしています」(同)