ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、水原一平さんについて。
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「一平ちゃん」と言えば、今やインスタントラーメンよりも、大谷翔平さんの通訳を務める水原一平さんです。大谷さんがアメリカに渡って以来、「翔平&一平」の仲睦まじい姿は、私のような邪(よこしま)なファンのあらぬ妄想を掻き立ててくれます。
此度のWBCにおいても、侍ジャパンに帯同していた一平さん。選手たちからの信頼も厚いようで、その存在感をして「陰の大会MVP」という声もあるぐらいです。今シーズンも大谷選手を公私にわたって支えてくれることでしょう。
それはそうと、非常に気になっていることがあります。連日のWBCフィーバーにまつわるあれこれを、各媒体も次から次へと記事にしているわけですが、「水原通訳が見た大谷の素顔」とか「水原通訳、侍Jとの写真を公開」とか、何でしょうか、この「水原通訳」という妙な日本語の響きから覚える違和感は。字面だけだと「水原通駅」にも見えます。
職業・肩書・地位を名前に付けて呼ぶのは、日本語ではよくあることです。それこそ「イチロー選手」や「長嶋監督」もそうですし、「木下医師」「横山弁護士」「小保方研究員」「高橋名人」「デヴィ夫人」「徳光アナ」など、日本は呼称天国です。これらの呼称にはすべて「○○をする人」「○○に値する人」という意味が含まれています。
そこでこの「水原通訳」ですが、きっと「呼び捨てにはできない」というメディア側の配慮と、ニュース見出しの文字数制限に悩んだ末に捻り出された呼称なのでしょうが、そもそも「通訳」というのは、会話や音声を他言語に訳す「行為」を表す言葉です。同時に「通訳をする人(通訳者)」を指す意味でも浸透しています。ならばここは「通訳の水原氏」もしくは「通訳・水原氏」で良かったのではないか。さすがに「水原通訳」は、日本語として行き過ぎではないかと思うのです。