「下弦の鬼」の解体の際には、無惨は不機嫌の絶頂で、下弦の鬼全員を殺害予定だったにもかかわらず、魘夢(えんむ)だけは許された。無惨は彼には艶然とほほ笑み「気に入った」と、処刑を取りやめている。

 アニメ3期の冒頭場面になるだろうが、遊郭戦の後に「上弦の鬼」が招集される。この会議では、同じく不機嫌ではあるものの、無惨の命令である「青い彼岸花」探索と産屋敷一族を葬ることに失敗している黒死牟(こくしぼう)・童磨(どうま)の釈明について、そこまでは直接的な叱責はせず、八つ当たり的に玉壺(ぎょっこ)に暴力をふるう。上弦の壱・弍・参はやはり別格扱いだ。特殊能力者の鳴女(なきめ)にも静かなままだった。しかし、お気に入りの彼らへの態度と比べても、堕姫・累への態度はやはり「特殊」だ。
 

堕姫と累の共通点

 無惨が惨殺してきた他の鬼、彼が重宝している実力者の鬼への態度と比較し、ひとつひとつ整理していくと、堕姫と累に“ある共通点”があることがわかる。

 まず彼らの心が少年少女のように「幼い」こと。そして、無惨のことを純粋に「救済者」だと信じていること。彼らはまるで、子が親を慕うように、無惨への信頼をゆるがせることがない。無惨を脅かすこともない。

 彼らは無惨の言いつけを守り、人間を残酷な方法で殺害することをいとわない。しかし、それでいて、殺害自体を「楽しんでいる」わけではなさそうなところが特徴的である。殺害、残虐行為、戦闘そのものを求めているのではなく、自分の満たされない思いの果てに、鬼としての行為がある。こういった、ある意味では「いじらしい」様子が、無惨の庇護欲をくすぐるのだろう。

 堕姫と累が人間を殺すのは、「生きる」ためだった。自分たちの「生」を邪魔する者、彼らの寂しさや辛苦を思い起こさせる者はためらいなく殺す。数百年生き続けてもなお、子どものように自らの感情に素直で、無惨を心から慕っている。幼い子どものような無垢さと、それに相反するほどの強さがあった。彼らが無惨に、特別に目をかけられた理由はここにあるのだろう。

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「人間ごっこ」の相手