上弦の陸(ろく)の鬼・堕姫(画像は新宿駅地下・メトロプロムナードの大型広告より)
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 17日の土曜プレミアム(フジテレビ、午後9時~)は『特別編集版「鬼滅の刃」遊郭潜入編』。「遊郭編」の特別編集版として、「遊郭潜入編」「遊郭決戦編」が2週連続で放送される。遊郭編での登場時間は短くとも、印象を残すのが鬼の始祖・鬼舞辻無惨。尊大で酷薄ながら、時に情愛を見せる無惨の「真意」とは。過去の記事で振り返る(この記事は「AERA dot.」に2022年2月19日に掲載された記事の再配信です。肩書、年齢等は当時のもの)。

【写真】「上弦の鬼」のなかで最も悲しい過去を持つ鬼はこちら

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【※ネタバレ注意】以下の内容には、既刊のコミックス、今後放映予定のアニメに関連するネタバレが含まれます。

 『鬼滅の刃』遊郭編は大人気のうちに最終話をむかえ、アニメ3期の放送決定も発表された。アニメ2期では鬼の堕姫、音柱・宇髄天元、素顔の嘴平伊之助など、美麗で華やかなキャラクターの登場シーンが目立った。そんな中、わずかな時間しか登場しなかったが、屈指の美しさを見せつけたのは、鬼の始祖・鬼舞辻無惨だった。彼と堕姫の会話シーンでは、めずらしく無惨の優しい声色を聞くことができた。下弦の鬼への「パワハラ会議」など、酷薄な印象の強い無惨であるが、堕姫には特別扱いとも思えるほど優しく接した。彼が「特別扱い」をする鬼にはある共通点があった。
 

鬼を統べる者・鬼舞辻無惨

 炭治郎たちが遊郭にやって来る2日前、鬼の堕姫(だき)は、潜伏先の「京極屋」の女将を墜落死させた。殺害後に堕姫が室内へ戻ってくると、鬼の総領・鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)が待っており、「調子はどうだ?」と彼女に声をかけた。

 この段階では、薄暗い室内で下を向いて座っている無惨の表情は、口元しか見えなかった。無惨の次の言葉、表情に注目させる、巧みな演出だ。「遊郭編」直近の無惨の登場シーンは、上弦の参・猗窩座(あかざ)を激しく叱責した場面だったこともあり、無惨登場に緊張感が高まった。

 猗窩座の任務報告を聞いた時の無惨は、愛らしく聡明(そうめい)そうな幼い少年姿であったが、怒気はすさまじかった。猗窩座ほどの男がなすすべもなく、血まみれの状態で、ひたすら無惨の怒りがおさまるのを待たねばならないほどだった。

<猗窩座 猗窩座 猗窩座!! お前には失望した>(鬼舞辻無惨/8巻・第67話「さがしもの」)
 

堕姫には“甘い”無惨

 しかし、堕姫に対する無惨の言葉はこんなふうに続く。

<随分人間を喰ったようだな 以前よりもさらに力が増している 良いことだ>(鬼舞辻無惨/9巻・第74話「堕姫」)

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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下弦の伍「累」にも甘かった無惨