ウズベキスタンの大統領夫妻との午餐に臨む両陛下と皇族方。出席者の後ろには、通訳者が控えている=2019年12月20日、皇居・宮殿「連翠」

料理を素早く召し上がる理由

 晩餐会や午餐に出席する天皇陛下皇族方は、会話以外にも注意を向けるべきものがあるという。たとえば食事もそのひとつ。

 元外交官のひとりは、晩餐会に出席した皇太子時代の陛下についてこう振り返る。

「優雅でありながらも、料理を素早く召し上がる皇太子さまのご様子が印象的でした。というのもこうした場では、料理を口に運び、つぎに会話――といった風に食事と会話を目まぐるしく繰り返します。皇太子さまのお食事が手早かったのは、両隣の席の方とどのタイミングでも会話ができるように気を配っておられるのだと感じました」
 

上皇ご夫妻への新年のあいさつのため、仙洞御所に入る愛子さま。愛子さまの頭上でティアラが輝く晩餐会の日が待ち遠しい=1月1日、東京都内

 ケニアの大統領夫妻を招いた今回の午餐では、西洋料理のコースが提供された。テーブルには江戸切子のグラスが用意され、アルコールが飲めない大統領に配慮して、りんごジュースで乾杯が行われた。両陛下や愛子さまには、日本酒やワインが用意された。
 

ゲストより早すぎず遅すぎず

 こうした場では、食事のペースも重要だ。特に両陛下が主催する食事会では、メインゲストとその配偶者の食事のペースが大切になる。接遇する皇室側は、ゲストより早過ぎないよう、また遅くならないよう気を配る必要があるという。

宮中晩餐会で、オランダ外相と歓談する雅子さま。ゲストに楽しいと感じてもらえる会話に加え、食事のペース配分にも注意を払うという=2014年10月、皇居・宮殿「豊明殿」

 前出の式部職を経験した人物も、賓客を接遇する天皇陛下や皇族方についてこう話す。

「お客さまに楽しんでいただけるような会話をなさると同時に、お客さまのペースに合わせて召し上がる。さらに、日本側の陪席者の様子にも気を配られる必要がありますから、大変なことだと思います」

 愛子さまの午餐デビューは、通訳なしでの英語での会話や、天皇ご一家での「おもてなし」に注目が集まった。しかし、ゲストやスタッフの様子に気を配りながらの接遇など、外からは見えない努力がそこにはあるようだ。春からは就職と公務の両立に忙しくなる愛子さま。どうか負担のない形で、春風のような愛子さまの笑顔を見せてほしい。

(AERA dot.編集部・永井貴子)

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