大宮:そうなんですね。
小川:僕、人間の行動とか、せりふとか、決断とかのつじつまが合わないのはめちゃくちゃ気になるんで。
大宮:そういう性質って、日常生活に、支障をきたさないんですか。
小川:どうなんだろうな。でも、日常生活の支障が、今の小説の僕の、豊かな大地になってるところがあるんですよね。
大宮:豊かな大地?
小川:まあ例えば、僕、子どもの頃、野球のストライクとボールっていうのが、納得いかなかったんです。
大宮:えーっ。
小川:ストライクって動詞じゃないですか。ボールは名詞で、もっというとアウトは形容詞じゃないですか。全然意味が分かんなくて、野球部員に「おかしくない?」って聞いたり。
大宮:理屈っぽいとか言われそう。
小川:いやまあ、そうですね。でも、みんなが気にしてないことを気にすることって、作家にとってすごく重要な視点の一つだと思っているんで。
大宮:子ども時代にいじめられたりしなかったですか。
小川:そういう記憶はないですけど、……まあ面倒くさいやつとは思われていたかもしれませんね。それに、子どものころは、大人って話が通じないやつらだ、とばかにしてたんで。「なんでボールはボールなの?」とか聞いても、「そんなこといいから、さっさと行け」みたいな感じで。
大宮:じゃあ自分の中で、妄想する癖がついてたりしたんですかね。
小川:そうですね。まあ、昔から考え事をしたり、調べてみたりするのは、たぶん多かったんじゃないかなと思いますね。
※AERA 2024年2月19日号