それを冷たい目で見ていたのは、昨年11月に国民民主党を離党し、教育無償化を実現する会を立ちあげた前原誠司氏だった。前原氏は2022年度本予算を決議した衆院本会議を、体調不良を理由に欠席したが、後に「ガソリンを下げることは大変重要だが、それだけではない」と述べ、この時の路線の相違が離党の原因になったことを明かした。

 離党という仲間割れを招いてもいとわなかったトリガー条項凍結解除だが、それから3カ月も経ずして国民民主党は岸田政権から離れ、今度は立憲民主党に近づこうとしている。4月28日に行われる衆院東京15区補選で、国民民主党は高橋茉莉氏を擁立。同じく補選が行われる衆院島根1区と衆院長崎3区に候補を擁立している立憲民主党にも協力を呼びかけた。「島根と長崎では立憲の候補、東京では国民の候補を一緒に応援しよう」というわけだ。

“党外与党”のはずの国民民主が……

 これは衆院で7人、参院で10人を擁する国民民主党の“野党化”で、岸田政権の“戦力低下”であることは間違いない。玉木氏は、宏池会の中興の祖である故・大平正芳元首相の後継を自任し、国民民主党が2022年度予算に賛成した時には岸田首相と連絡を取っていることを強調するなど、自民党との近似性を示していた。すなわち「党外に置いた与党」というのがこれまでの国民民主党の位置付けだったのだ。

 昨年の自民党の調査では、次期衆院選の自民党の予想議席は最悪で220議席となり、この傾向は今年に入っても変わっていない。これに公明党を加えても、かろうじて過半数を維持できる程度だ。

 にもかかわらず、岸田首相があえてトリガー条項凍結解除に真剣に向き合わないのは、これに消極的な財務省と、財務省の思惑通りに動く党内の税制調査会(税調)の勢力に制されているためだ。

 その財務省に影響力を有する麻生氏は、次の衆院選では不出馬説がささやかれている。とはいえ、その権力は衰えるとは限らない。同じくわずか1年で首相の座を退いた森喜朗氏も、キングメーカーとして長らく君臨した。

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも
次のページ
麻生氏は上川氏を担いでキングメーカー狙い