しかし、である。日本は準々決勝のイラン戦で良いところなく敗れてしまう。基準を示すことが全くできなかった。この試合では1戦目で見られたモチベーションの差に加え、2戦目で見られたロングボールに対する脆さも露呈。さらに疑問の残る采配も見られ、負けるべくして負けることになった。

 守田英正(スポルティング)による得点で先制したまではよかったが、その後、相手のロングボール攻撃とセカンドボールの回収によって自陣から出られなくなった。

 不調の板倉滉(ボルシアMG)を狙われたが、相手の意図がはっきりしている中でも森保監督は動かなかった。板倉は24分にイエローカードをもらっており、長身で空中戦に強い町田浩樹(ユニオン・サンジロワーズ)や渡辺剛(ヘント)に交代させるか、あるいはセンターバックを1人加えて3バックにして中央を固めるか。選択肢はあったはずだ。だが、指揮官はカードを切らなかった。

 前田大然(セルティック)を左サイドハーフで初先発させ、イランの右サイドからの攻めを封じ込めることには成功した。プレスの尖兵の役割を前田に与えたことは正解だった。ただ後半途中で三笘薫(ブライトン)と南野を投入し、前田と攻撃の糸口を探り続けていた久保建英(レアル・ソシエダード)をベンチに下げたのは失敗だった。以降、ますます攻め手が無くなった感は否めない。

 指揮官は三笘らの「推進力に期待した」と交代理由について語ったものの、ロングボールに対する手当てを行わないため、推進力が生きることはなかった。

三笘はイラン戦に後半22分から途中出場。だが流れを変えることはできず、シュートゼロで試合終了となった

反省をどう生かすか

 日本はアジア最高のFIFAランキング17位で大会に臨み、開幕前は他国からタレント集団と称されていた。しかし自ら掲げた優勝という目標を達成できず、そればかりか高さ、パワー、そしてロングボールという苦手な面をさらけ出すことになった。

 今後、北中米W杯出場を目指すうえで、それは大きなマイナス要素になるかもしれない。日本の弱みを、多くの国が改めて知ることになったからだ。3月にはW杯2次予選で北朝鮮と対戦する。人材次第だが、早速、ロングボールを多用してくる可能性もないとは言えない。その時に今回の反省を指揮官が生かせるかどうか。

 次回W杯は出場枠が広がり、アジアは4・5から8・5枠に拡大した。ただ今回、日本はベスト8止まり。決して安心していられないことを、アジアカップの成績が教えている。(ライター・佐藤景)

AERA 2024年2月19日号

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