厳しい表情で戦況を見つめる森保監督。試合後、「私が交代カードをうまく切れなかったのが敗因」と述べた(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 とくに昔よりもはるかに所属クラブのレベルが上がった欧州組にとって、クラブの公式戦がある時期に開催されるアジアカップに参加し、戦うことは精神的に難しかっただろう。ただし、それが他国の選手たちと明確な差になって表れていたとも言える。良い悪いではなく、1勝に涙する中東勢とは、大会の位置づけがあまりにも違っていた。

 ベトナム戦で苦戦した森保監督は「初戦の難しさを学ぶ試合になった。アジアカップを勝ち抜いていく上では簡単じゃないとあらためて学ばせてもらった」と語っていたが、次の試合ではさらに厳しいレッスンを受けることになった。

 2戦目で対戦したイラクは、日本の弱みを直接的に突いてきた。高さとパワーを前面に押し出してきたのだ。容赦なく放り込まれるロングボールに最終ラインはずるずると後退。ボランチの遠藤航(リバプール)も低い位置でのプレーを余儀なくされた。空中戦で競り合ってこぼれたボールをことごとく奪われると、連続攻撃を浴び続けた。

戦術と対策の失敗

 喫した二つの失点は日本の右サイドを破られ、クロスから決められたものだが、ロングボール攻撃で劣勢になったことが原因だった。昔から存在したロングボールという日本攻略法は、W杯カタール大会で優勝候補だったドイツとスペインを撃破し、その後に国際Aマッチで10連勝を飾った現在の日本にも有効だったのだ。

 ロングボールへの対応は、終着点で対処するか、出発点を抑えるかだ。日本は予め、その両方を準備していたものの、ベトナム戦同様に、前でプレスがかからず、最終ラインが後退し、準備した対処法を発揮できずに1-2で敗れることになった。

 初戦は意識とモチベーションの問題で受け身にまわり、チーム内の意思統一ができずに苦しんだ。それはマネジメントの失敗と言える。そして2戦目は高さとパワーという日本が苦手とする攻め方にまんまとはまって敗戦。これは準備した戦術と対策の失敗と言えるだろう。

 イラク戦の2日後(1月21日)、日本はチーム内でミーティングを開いた。その中で選手も活発に意見を出し、全体ですり合わせを行ったという。とくにポイントになったのは、最終ラインの設定とセカンドボールの回収。ラインが下がりすぎると中盤のスペースが広がり、競り合いでこぼれたセカンドボールを相手に奪われて2次攻撃を浴びることになる。そうならないようにラインを高く設定し、全体をコンパクトに保つことを確認し合った。

指揮官はカード切らず

 指揮官もいい機会になったと振り返った濃密な話し合いを経て、3戦目のインドネシア戦、続くラウンド16のバーレーン戦はしっかり勝利をつかむ。インドネシア戦で今大会初先発した冨安健洋(アーセナル)は「代表の基準を取り戻しただけ」と話した。逆に言えば、基準をピッチで示すことができれば、勝利の確率が高まることが証明された。

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