ところが私が高校1年のとき、朝鮮戦争が始まり、在日米軍が戦争に参加すると、空気が大きく変わり、私が戦争反対と言うと、教師や先輩たちから、お前は共産党かと強く非難された。そして、米国の強い要請で憲法と矛盾する自衛隊が作られた。
こうした体験をしている私としては、何としても言論、表現の自由は堅持されなければならず、保守もリベラルもタブーなしで存分に討論できるのは、日本の何よりの強みだと考えるのである。
今、日本の政治や経済に対して、あきらめや悲観論が広く蔓延(まんえん)していると感じる。期待して裏切られるよりも、文句を言っているだけのほうが楽だからだ。ただ、苦境が続く今だからこそ、求められるのは前向きな議論だ。広く深く討論できるこの状況が堅持される限り、日本経済の活性化は実現できると私は考えている。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2023年1月20日号