年初の2回の重要な予備選でライバルに圧勝した、共和党の米大統領候補で前大統領ドナルド・トランプ氏。同党の指名候補になるのは確実とされる。トランプ氏の強さの秘密を探った。AERA 2024年2月12日号より。
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ロイター通信の世論調査によると、バイデン氏との一騎打ちが見込まれる本選挙では、バイデン氏の支持率が34%なのに対し、トランプ氏が40%と優勢だ。
選対本部での取材でも、トランプ氏の選挙マシンがよりパワフルになっているのを痛感した。ニューヨーク州選出下院議員でトランプ派急先鋒のエリーズ・ステファニク氏(39)の演説は、ほぼ10時きっかりに始まった。彼女が6分ほどの演説を終えると、メディアのカメラが集まる場所に案内し、次々にインタビューを受けさせていた。100人もの支持者に「道を開けてください」と言って案内する若い選対メンバーはそろいの紺色のジャケットを着ていた。
驚いたのは、電話による投票勧誘の様子だ。2020年に訪れた民主党候補のバーニー・サンダース上院議員の事務所では、民主党員登録をしている有権者の電話番号や住所を印刷したリストに対し、電話をかけていた。個人宅の電話番号が多く、引っ越してすでにいない人も多いが、そのリストを頼りに、ボランティアがスマホで電話をかけていた。
ところが、ニューハンプシャー州のトランプ選対では、紙のリストの代わりにアプリを使っていた。ボランティアの人々に聞くと、スマホやタブレット上でボタンをタップするだけで、有権者に電話がかかる。つまり、いちいち印刷された電話番号を入力しないため、時間が節約できる。ボランティアの一人は、1日200人に電話をしているという。また、アプリ操作で電話をかけられるため、机や椅子も必要ない。大学生のような若い人々が立ったまま、あるいは床に座って電話をかけていた。ボランティアのジム・ザッカ氏は、選対が混み合っていたため、宿泊しているホテルのベッドからアプリで電話をかけると言っていた。
トランプ氏の選挙マシンは、2016年の初戦や20年当時と異なり、はるかに効率的に、組織的に運営されている。