過去の選挙戦からのトランプグッズ満載のバス。選対本部前で商売している。車内は撮影禁止で、オーナーは猫1匹と集会がある州に移動し続けている(撮影/津山恵子)

 20日晩の選挙集会でも、紺色ジャケットの選対スタッフやボランティアが、テキパキと動いているのを見た。20年の集会では、こうしたスタッフは見たことはなく、眼光鋭く体格のいい警備員が歩き回っているのを見ただけだ。しかし、今回は紺色ジャケットの男性が、足が悪い高齢者に腕を貸して、トイレに連れていき、席まで連れて帰る姿も見た。ゴミ箱を探している支持者から、ゴミを受け取りゴミ箱に捨てさえしていた。

 トランプ氏が集会会場に到着し、演説を始める直前、紺色ジャケットの男性と、トランプ氏好みの原色スーツ、ハイヒール姿の白人女性らが、一斉にステージの裏に集まってきた。ステージに上る前のトランプ氏を見送るのだろうか。その光景は軍隊的でもある。

 トランプ氏の選対、そして各州における票集めの選挙マシンは、16、20年に比べて、はるかに洗練されたものになっている。

2021年1月6日に連邦議会を襲撃した暴徒を思わせる、動物の角があるかぶり物をしたトランプ支持者が、集会会場前でお祭り騒ぎ(撮影/津山恵子)

若い支持者が急増

 最後に、選対本部でも集会でも、若い支持者が過去に比べて急増していた。集会会場に入って驚かされた。トランプ支持者は、「高齢、白人、男性が多い」という通念は過去のものだった。20~30代の若い白人男女が、楽しそうにトランプ登場を待っていた。若い人は20年の大統領選挙で、バイデン氏を勝たせた強力な支持層だった。しかし、彼らがトランプ支持に流れている。

 トランプ氏を追う南部サウスカロライナ州のヘンリー・マクマスター知事は、ニューハンプシャー州の集会で「予備選挙はまだ数十州で開かれる。私たちの戦いは終わっていない」と宣言した。保守派の富裕層が、彼女の選挙戦に巨額の寄付をし続けている。

 しかし、ニューヨーク・タイムズの記者は、ポッドキャストでこう話した。

「ヘイリー氏を支持しているファンは、トランプ氏が勝つという幻滅を認めたくないのだ」

 それほどにトランプ氏は、強い。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)

AERA 2024年2月12日号より抜粋