貯金が少なくても、年金が少なくても、これだけ働く環境が整っているのです。老後をやめさえすれば、お金の不安を必要以上に感じることは減ります。
(3)孤独の不安
定年を迎えて、人間関係のストレスから解放されたと思ったのもつかのま、今度は孤独というストレスに襲われる。よく耳にする話です。
もともと人間は、群れで生きる動物です。自然界で群れからはぐれることは、猛獣に襲われたり、食べものを得ることができずに飢えたりなど、死に直結する非常事態でした。だからこそ、孤独は大きなストレスになるのです。
フロイトやユングとも並び称される心理学の巨人、アルフレッド・アドラーも、人間には「共同体感覚」が必要だと述べています。
共同体感覚とは、家庭、地域、職場などにおいて、人とつながっていると感じることを指します。人はこの感覚を感じられるとき、幸福を感じるとアドラーはいっています。
孤独にさいなまれる人は、会社一筋で生きてきた男性に多い傾向があります。定年を迎えたとたん人とのつながりが一気に失われてしまうため、うつ状態になったり、酒びたりになったり、引きこもりがちになったり、深刻な事態におちいることもあるようです。
たびたび例に出して恐縮ですが、私の父は孤独とは無縁の毎日を送っています。
妻には先立たれてしまいましたが、家庭教師で教えている子どもたち、その親御さん、ご近所の方々をはじめ、多くの人とつながりを持っています。ですから寂しいという感覚はないそうです。
人とのつながりがあれば、万が一のときも安心です。近年、孤独死が社会問題になっていますが、老後をやめる人が増えていけば、この問題も解決に向かうのではないでしょうか。