おおむね40代以降
男女の更年期は症状に共通点もある一方、メカニズムや期間は異なる。女性は卵巣から分泌されるホルモン「エストロゲン」の不安定なアップダウンが更年期障害の要因。一方、男性更年期の症状はほとんどが精巣でつくられる「テストステロン」というホルモンの急激な減少によって起きる。女性更年期は「閉経前後の10年間」と定義されているのに対し、男性更年期の期間は「おおむね40代以降」とファジーな面も否めない。興梠院長は言う。
「40代以降はその先の人生が見えてくる年代でもあります。それがリアルに感じられるほど憂鬱(ゆううつ)になる人が増えるのと同時に、社会的役割が大きくなるにしたがって弱みを見せたくないという意識も男性には強く働く傾向があります。こうしたストレスが加齢に伴うテストステロンの減少と相まって様々な症状を引き起こしていると考えられます」
男性更年期に特徴的な症状は筋力低下や筋肉痛、頻尿。他にも、不安やイライラ、不眠、性欲の減退などがある。興梠院長のクリニックでは、パートナーに更年期障害の疑いを指摘されて来院する男性が半数近くに上るという。中には「抗うつ薬で治療していたけど良くならないので来た」と告げる人も。実際、うつと更年期の症状は混同されがちで、抗うつ剤の処方を続けながらテストステロンを補充して症状が改善した人もいるという。
「男性更年期のセルフチェック(AMSスコア)はメンタルと身体の不調の両方を確認しています。チェック項目に広く該当する人はうつではなく、更年期の可能性も考えたほうがいいでしょう」(興梠院長)
高い治療のハードル
男性更年期はテストステロンの減少が激しくなる局面で症状が顕在化しやすくなる。このため、血液検査で減少が確認できれば補充するのが最もシンプルな治療法だという。
「テストステロンはもともと自分の体内にあるものですから、過度に怖がらずにホルモン補充を治療の選択肢の一つに加えることをおすすめしています」(同)
とはいえ、近年は男性更年期の診療をHPなどに掲げるクリニックも増えているが、女性に比べて男性の治療のハードルは高いのが実情という。
「女性の更年期障害に対しては検査も治療も保険適用されますが、男性の場合、治療の入り口にあたるテストステロンの血液検査は保険適用外のため1万~1万5千円かかります。男性更年期の治療薬の種類の少なさや入手ルートが限定されることもネックといえます」(同)