ホルモン補充療法以外にも、有酸素運動でテストステロンの低下を防ぐことが可能だ。30~40分のジョギングやウォーキングといった有酸素運動を週3回程度行うことでテストステロンの分泌量が上がる、との研究結果もあるという。タンパク質の摂取や筋力アップがテストステロンの増加につながることも分かっている。興梠院長は食事と運動、睡眠のバランスが大事と唱え、「まずは日常生活の中でできることから始めてほしい」と呼びかける。
「動脈硬化の原因とされるコレステロールは悪者扱いされがちですが、女性ホルモンも男性ホルモンも、そして人体の活力に不可欠な細胞膜もコレステロールで構成されているため過度な不足は禁物です。食生活に肉や魚、卵といった食材を取り込むのと同時に、それらが体内にたまり過ぎないよう適度な運動をするのが最もいい循環だと思います。疲れが蓄積すると、テストステロン低下の原因になるため、しっかり休んで回復することも大事です」
アエラのアンケートでは、「夫は穏やかな性格ですが、最近イライラしやすくなっていると感じます」と更年期症状の疑いのある夫に代わって回答を寄せた東京都の50代の女性もいた。この女性は、人間ドックの検査項目に男性更年期も加える必要性を記事に盛り込んでほしいと要望し、こんな意見を添えていた。
「会社でも(男性更年期の)症状に合わせて働き方なども考えていくことが必要ではないかと思っています」
症状の認知、理解を
勤務先の人間ドックでも、女性に比べると男性の更年期障害はほぼノーチェックというケースが多いという。前出のホットフラッシュに悩む男性も「人間ドックの際に更年期について相談した、と妻から聞いたことがありましたが、自分の身に置き換えることはありませんでした」とこれまで受診してこなかった経緯を振り返った。その上で、人間ドックの問診票に「男性更年期の自覚症状」に関するチェック項目があれば受診や治療につながったと思う、と話した。
男性更年期の症状に対する認知や理解がもっと広がれば、国や民間の対策を後押しする流れにもつながるはずだ。興梠院長は言う。
「男性更年期は『年のせい』と放置されることも多いですが、今後は治療可能な領域として認知されるようになってほしいと思います」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2024年2月5日号