男性の更年期障害に対する社会の理解や認知はあまり進んでいない(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 更年期障害は男性にもあるが、理解や認知は進んでいない。40代を過ぎれば誰にも起こり得る男性更年期。その症状と対策を専門家に聞いた。AERA 2024年2月5日号より。

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 更年期障害といえば、女性特有の症状と思っている人もまだまだ少なくないだろう。しかし、実際は男性にも同じような症状が出る。アエラが昨年12月に募集した男性更年期の当事者アンケートでも、50代を中心に「不眠」や「不安」「意欲の低下」といった自覚症状が続々寄せられた。

 埼玉県の自営業の男性(63)は50代前半から続く「ホットフラッシュ」(のぼせやほてり)に悩まされている。症状が出るのはなぜか外食時の「ランチ限定」。食事中に首から上の汗が止まらなくなるという。

「辛いものを食べているならともかく、焼き魚定食や寿司といった本来なら汗をかくような食事でもないのに汗がタラタラ出てくるので、どうしても周囲の目が気になります」

 会社員だった数年前までがピークで、多い時は週5日の出勤日のうち2日発症した。予兆は朝に訪れる。「上半身がほてるような感覚」で察知するという。男性はポケットのハンカチ以外に、かばんにフェイスタオルを常備している。今も思い出すのは、うっかりハンカチを忘れた日に陥った窮地のシーンだ。その日は朝に「予兆」がなく、出勤後に体調の異変を感じた。ランチでざるそばを食べていると、案の定、汗が止まらなくなった。仕方なく、テーブルに置かれていた紙ナプキンで汗をぬぐう。その数はみるみる10枚、20枚と積み重なっていく。冷たいそばをすすりながら汗みどろの男性は店内でも異様に映ったに違いない。見かねた店員から「お水、お持ちしましょうか」と声がかかった。

ホットフラッシュ

 難儀なのは、どうしても外せないビジネスの会食。「予兆」がある時もランチに臨まざるを得ない。ハンカチがびしょびしょになるほど大量の汗をかいているのに気づいた会食の相手から、「体調悪いんですか」と困惑気味に問われることも。昼どきに仕事が一段落し、本来なら「このあと食事でも」と誘うべき場面でも、初対面の相手とは次第に会食を避けるようになったという。

「ホットフラッシュは女性だけでなく、男性の更年期にも多くみられます。この男性は活発に動く日中の時間帯に自律神経が乱れやすく、食事の雰囲気や食べる行為が刺激になって更年期の症状が出やすくなっている可能性があります」

 こう指摘するのは男性更年期に詳しい「東京はなクリニック」(東京都渋谷区)の興梠真紀院長だ。

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