新日本プロレスのリングでデビューし、SWSに来たんだけど、結局「来てやった」が捨てられなかったようだ。
北尾に受け身とか試合運びを教えると「天龍さん、俺が一気に力を出したら相手はぶっ壊れちゃいますよ」ってそればっかりで、真面目に練習しないんだから。「客にショー的な部分も見せて初めてプロレス、初めてプロレスラー北尾だ」って何度言っても分かってくれなかったね。
会社の移動バスに乗っても「長いんだよバスは! キツいんだよ!」って、俺がいないとしょっちゅう文句を言っているんだけど、俺がバスに乗っていると大人しい(笑)。
そんな北尾を少しでもカッコつくようにしたかったんだけど、最後までうまくいかなかったよ。だから新日本でも長州力と揉めたんだろうな……。
長州もなかなか北向きな性格だろう。絶対に折れないし、彼は北向きに“すっとぼけ”も入っているし、なんといっても商売人だ。やっぱり俺と違って大学を出ているから計算ができるんだ。
そもそもプロレスラーは、北向きうんぬんと言うまでもなく、お互いの粗探しをしているもんだ。お互いの粗を探して、けなして、それで気分だけは優位に立っているのがプロレスラーってもんだ。
ジャンボ鶴田に優位に立とうと
俺だって、ジャンボ鶴田にいろいろな面で負けているとき、仲間を大切にして飯をご馳走したりして「俺はジャンボほどケチじゃない! 負けていない!」って優位に立とうとしていたこともある(笑)。
相撲でもう一人、北向きといえば、多分、朝青龍もそうだったんじゃないかなぁ。朝青龍に限らず、モンゴルから来た人は日本の相撲になじんで、よく横綱、大関までいくよね。日本語も覚えて、よく順応していると感心している。