しかし、僕が取材のフィールドにしている千葉県北東部においては、「限界ニュータウン」といえど、立地はあくまで都市近郊型の農村地帯である。基幹産業である農業や、その産業を担う既存の農村集落までもが、将来的な課題はあるとはいえ、現時点で直ちに持続不能になるほど著しく衰退しているという印象はない。
また、市街地でも、旧市街地の空洞化という課題を内包しながらも、今も通常の経済活動が展開されている。そうした小都市のすぐ外側に「限界ニュータウン」「限界分譲地」は存在する。
この、都市部から極端に遠いわけでもなければ、かといって利便性を享受できるほど近くもないという絶妙に中途半端な立地こそが、限界ニュータウンをめぐる諸問題を引き起こす要因の一つであると考えている。
従前、「限界集落」の代表格であった過疎地・へき地集落の中には、産業構造や住民の就業形態、災害、あるいはダム建設などの公共事業など、諸々の環境の変化によって住民が離れ、消滅したところが少なくない。
一方で、限界ニュータウンの場合は、自力移動が困難なほど体力の衰えた高齢者でもない限り、日常生活に著しく支障が出るほど悪条件の立地でもないために、利便性が悪い代わりに地価が安い住宅地として、地域社会に今も組み込まれているという実態がある。
別荘地として開発された分譲地は、山村集落と変わらない立地条件のところも数多くあるが、少なくとも僕が踏査しているような千葉県の「限界ニュータウン」「限界分譲地」は、都市部から遠く離れたへき地というよりは、都市の郊外の、そのまたさらに外縁部、郊外と農村部の境界付近に散在している。