都市計画区域に含まれていないということは、元々あまり大規模な開発の予定もないのだから当然地価は安い。開発行為にかかわる規制も緩いので、許可が不要な範囲で開発できる面積も広くなる。僕は「限界ニュータウン」を抱えるいくつかの自治体の担当部署で、当時の開発許可の記録が残されているか尋ねてみたが、都市計画区域外における開発分譲地で、開発許可申請が出されていたところは全体のごく一部であった。開発許可申請を行う必要がないのだから、わざわざ余計な手間をかける業者はいない。

 地価の安い都市計画区域外で、開発許可が不要な範囲の小規模開発によって宅地分譲を繰り返すという、およそ町の将来を丁寧に見据えているとは言い難い安易なビジネスモデルが、千葉県で言えば、主に成田国際空港周辺や、JR総武本線やJR外房線沿線の自治体で横行していた。具体的には八街町(現・八街市)、山武町(現・山武市)、下総町や大栄町(いずれも現・成田市)といった自治体だが、いずれの自治体も人口は多くなく、農業を基幹産業としていた小規模自治体ばかりだ。

 他県でも同様の開発は行われていたが、選定される立地の条件は同じで、都市部から近くもなければ、かといって観光地として名を馳せるほど風光明媚な景観が広がる大自然というわけでもなく、言っては悪いが、前述した通り、あまりに「中途半端」な立地がターゲットにされている。

 現代の感覚であれば、さしたる開発の計画もなく、十分な公共交通網も整備されていないような地域において、なぜそれほど盛んに宅地分譲が行われたのか、事情が分かりにくくなっている面もあるかもしれない。今なお数多く残る更地を見て、その立地や利便性の悪さから、需要の読みが甘いデベロッパーが宅地開発を行ったものの思うように売れ行きが伸びず売れ残っている、と思い込んでしまうのも無理はない。

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