誰もが大切な家族のために、自分の力や時間を使ってできる限りのことをしようと思う。それが子育てだったり、看病だったり、介護だったりする。中でも何を優先したらいいのか、何を選んだらいいのか。正解がまったく分からないのが「介護」ではないか。それはなぜか。おそらく、その人の人生を丸ごと受け止め、どう生きるのか、どう死んでいくのかまでの選択を任されるからだと思う。介護以外でそこまで一人の人生の生死に関わる作業はないだろう。

 母が死の宣告を受け、自然死を求めていたのにも拘わらず、私は延命の道を選び、この世界に留めた。

 介護者というものは、自分が下した決断に苦しんだりするし、要介護者を見送った後も自分を責めることがあると思う。そうならないために私は多くの人の介護体験記を読み、話を聞き、情報収集をすることにした。身体介助や医療的ケア、介護保険を含む社会保障制度を学ぶため、介護福祉士を養成する専門学校にも入学。2年の通学の末、国家試験を受け、晴れて介護福祉士となった。

 内閣府の「平成30年度高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」によると、60歳以上の約半数(51%)が自宅で最期を迎えたいと考えている。さらに厚生労働省の「2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況」によれば、要介護者の年齢が男性は85歳~89歳の23・7%、女性は90歳以上の30・9%が最も多くなっている。最後まで住み慣れた我が家で、と願う人が半数を超える一方で、要介護者は高齢化している。どうやって、これから在宅介護を実現していけばいいのか。最期ぐらい自分の家で迎えさせたいと望む家族の希望を、どうやったら叶えることができるのだろうか……。

 団塊世代全員が後期高齢者になる「2025年問題」到来まであと1年。介護を受けたくても受けられない「介護難民」にならぬよう、大切な人のために悔いのない旅立ちを準備するためにも、何が必要で何を心得ておくべきなのか。私の葛藤と後悔に満ちた介護体験から学んでほしい。

 もう、これ以上空き家を見たくない。

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