いい例が私の父です。父は今年で93歳になりますが、いまも家庭教師の仕事をしています。かつて小学校の先生をしていた経験を活かし、近所の子どもに算数を教えているのです。最新の中学受験の入試問題を自分で解き、どうすればわかりやすく教えることができるか研究することも怠りません。年をとったら脳が衰え、認知症になると思い込んでいる人が父の姿を見たら、きっと驚くでしょう。

 仕事をして収入を得ていれば、生活費や年金の不安はなくなります。日々のやりがいも感じられますし、社会とつながることで孤独感にさいなまれることもないでしょう。頭も体も使いますから、認知症やロコモティブ・シンドロームを遠ざけることもできます。つまり、冒頭で挙げたような老後不安は、「老後をやめる」ことでおおむね解決できるのです。

 では、仕事をしていなければ「老後」なのか。そんなことはないと思います。ボランティアや趣味、勉強、創作などに励んで、毎日をワクワク、イキイキと過ごしている人は、何歳であろうと「現役」でしょう。私自身、現在勤めている大学を退職したら、多くの人に勇気と希望を与える小説を書くという夢をかなえたいと考えています。「いい年をして」「年甲斐もなく」といった言葉で自分を縛るのではなく、死ぬまで新しいチャレンジをすることが何よりも重要だと思うのです。

 とはいえ、「何をしたらいいかわからない」という人も多いのではないでしょうか。そこで本書では、「やりたいことが見つかる108のリスト」と題して、さまざまな提案をしています。たとえば、家のまわりに落ちているゴミを拾う、ちょっとだけ遠回りをして「ついで散歩」をする、しばらく会っていない友人・親戚に手紙を書く、温泉ソムリエ、ビール検定などユニークな検定に挑戦する……。何かを始めるのに遅すぎることはありません。少しでも興味を持ったものは、迷わず実践してみてください。

 他にも、今日からできるコンディショニングづくり、食事・運動・睡眠などの生活習慣、自律神経の整え方、意識したいマインドなど、生涯現役で生きるために重要なことを医師の立場から、私自身の経験もまじえながらお伝えしています。本書がみなさんの新しい人生の扉を開くきっかけになれば幸いです。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?