『老後をやめる 自律神経を整えて生涯現役』
朝日新書より発売中
人生100年時代を迎え、長い老後生活に漠然とした不安を感じる人が増えています。「貯金はこれだけで足りるのか」「年金は本当にもらえるのか」「介護が必要になるかもしれない」「何を生きがいにすればいいのか」「一人ぼっちで寂しく生きることになるのでは」。こうした不安の声を、医師である私は数多く耳にしてきました。
不安という感情は、人間という動物にそなわった本能です。不安を感じるからこそ、危険にそなえたり、計画を立てたり、仲間と協力し合ったりすることが可能になりました。もし不安という感情がなかったら、いまごろ人間は絶滅していたに違いありません。
しかし、情報過多でストレスの多い現代人は、必要以上の不安を抱えがちです。強い不安にさらされていると、気持ちがネガティブになり、日々の生活を楽しむことができなくなります。家に閉じこもりがちになり、新しいことにチャレンジする意欲もわいてきません。
さらに、私の専門分野である自律神経への影響も見過ごせません。ご存じの方も多いと思いますが、自律神経は活動するときに働く交感神経と、リラックスするときに働く副交感神経によって成り立っています。いわばアクセルとブレーキのように、私たちの体を24時間、コントロールしているのです。
ところが、つねに強い不安にさらされていると、自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位になります。すると、不眠、頭痛、吐き気、肩こり、めまい、便秘など、あらゆる不調に襲われるようになります。それだけではありません。恐ろしいことに、心筋梗塞、脳卒中といった命にかかわる疾患にもつながるのです。
では、老後不安から解き放たれ、人生100年時代をワクワク、イキイキと過ごすためには、どうすればよいのでしょうか。その処方箋としてこのたび上梓したのが、拙著『老後をやめる 自律神経を整えて生涯現役』です。タイトルにあるように、私は本書で「老後をやめる」ことをみなさんに提案しています。
そもそも、老後とは何でしょうか。一般的には「定年後の隠居生活」を指す言葉です。けれども世の中には、定年など関係なく、生涯現役でバリバリ働いている人がたくさんいます。